庭一筋
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東風風かば 匂ひ起こせよ梅の花 主なしとて春を忘るな 六日は啓蟄。 東から柔らかな風が吹き、冬籠りの虫が、地中から這い出して、東大寺の修二会がなじまり、いよいよ春です。 少し遅れて咲き始めた、今年の梅も、馥郁たる香りを漂わせ、今を盛りと咲き誇ります。 梅は、中国原産で、古く我国に渡来したとされます。(紅梅は遅れ、平安時代初期に伝わったとの説もあります。) バラ科 サクラ属の落葉中高木で、野梅系、紅梅系、豊後系に分かれ、一重咲、八重咲、花色も白、薄紅、紅、緋と、実梅、花梅、いろいろの園芸品種があります。 こよなく梅を愛した、飛梅伝説の菅原道真公を祭る、京の梅の名所、北野天満宮には、鎌倉時代の白太夫形石燈籠、本歌と、江戸時代初期の織部燈籠があります。 庭作りにかかわる私共も、折があると、勉強を兼ね、参詣しています。(大阪府の道明寺天満宮にも、鎌倉時代の道明寺形石燈籠、本歌があります。 梅に因んだ手水鉢に、『梅ヶ枝の手水鉢』があります。 古墳から出土した、石棺の蓋を、縦に約三分の一削り、起こして水穴を穿ち、手水鉢にした見立物の縁先手水鉢です。 横にある突起を、梅の枝と見、この名があるとか……。見る機会は少ないとおもいます。 祖父がよく『梅ヶ枝の手水鉢 たたいてお金がでるならば たたいてお金が出たならば……』と口遊んでいましたが、これはちがう手水鉢のようです。 梅を用いる役木に『袖が香』があります。 江戸時代の造園書『築山庭造伝』に、『袖が香とは垣根に梅を植えるといふなり、枝数多きは宜しからず』とあり、縁先手水鉢に設ける袖垣の内か外に、枝先が、水鉢の上にさしかかるように、梅の木を植えます。(昔は、梅の葉から滴る雨露が、水鉢の水中の虫を殺すと言われていた。) 風情のある役木です。 啓蟄をすぎると、松の菰巻がしてある場合、早めに取りはらい、できれば焼却そるか、袋に入れてゴミに出しましょう。(中に虫が入っています。)
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