花と樹と風と土 ガーデン工房 結 -YUI- のガーデン通信
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行田市K様邸を終えてからしばらくして、こちらのお宅からお問い合わせがありました。 大きな樹を中心にツリーハウスの要領で何段かのウッドデッキを作り、 そこに滑り台やブランコやターザン・ロープを組み合わせました。 この場合はまだキャンプ場であって、きちんとメンテナンスをしたり安全管理をしたりするスタッフが常駐しているわけで… それが個人のお宅の場合、万が一の場合の事を思うと、その責任には計り知れないものがあると思い、しばらく躊躇させられました。 そんなときに知ったのが奈良県は吉野の山中で地元の木材を使って遊具を作っている「自然工房ウッドウォームズ」という会社でした。 安全と防腐には万全の注意が払われ、知れば知るほど良心的で誠実な仕事ぶりが伝わってくる、そういった会社です。 そこでわたしはそこの製品を購入して頂くことを条件に、そのお仕事を引き受けることにいたしました。 遊具はお客さんに買いそろえて頂いて、わたしが作る。 ウッドデッキは同じ防腐処理をした国産杉材を使ってわたしが施工し、芝ではないグランドカバーということでヒメイワダレソウを全面に植え、お子様が元気に飛び回れるような、公園のような庭にすることとしました。 でも課題がもうひとつ。 スギナで一杯になるんです…と。 作業はスギナ対策からスタートすることになりました。 とはいえ、スギナは簡単に根こそぎ出来るもので無いことを、わたしはこれまでの幾度と無い戦いで思い知らされており、近頃ではその特性にむしろ惹かれるものさえ感じるほどになっておりました。 スギナは酸性土に好んで生育し、しかしその身体はアルカリ性。 自ら枯れて土壌を中和させつつ、やがて土の性質を変えてその場から消えていく。 研究不足で確かな話ではありませんが、ツクシはその段になってようやく生えて、新たに生育地を求めて胞子を散らす繁殖手段なのかもしれません。 だとすれば気長につきあ合っていけば、いずれ居なくなる訳だし、その間はスギナ茶などの恩恵を蒙っても良いし、もし少しでも早く居なくなって貰いたいなら、スギナの力を借りる前に土壌改良を施せば良い訳です。 という訳で、粒状で遅効性の苦土石灰の力を少しばかり借りて、庭づくりをスタートさせたのでした。 完成は10月でした。 9月の最初の HANA sakaso プロジェクトから戻ってすぐに着手したのですが、ちょうどその頃、関東地方を逸れた台風が紀伊半島を直撃し、事もあろうに和歌山から奈良にかけて多大な被害をもたらしたのでした。土砂崩れや川の増水などによって多くの人命を奪ったあの台風12号でした。自然工房ウッドウォームズさんも、その被害から逃れることは出来ませんでした。 このお宅の奥さまに遊具の購入をお願いしておきながら、実はわたし自身も別件でウッドーウォームズさんにいくつかの遊具を発注していたのですが、その品物の発送が遅れるという連絡を、社長の大上さんから頂きました。 幸い会社施設は直接の被害を受けなかったものの、周辺道路のほとんどが寸断され、家の電話ばかりか携帯電話も使えず、かろうじて残った峠の道伝いに三重まで出て、それから電話しているとのことでした。 そんなことはどうでも良いから、まずは復旧を優先して欲しい… そう言うしか有りませんでした。 わたし自身、宮城の被災地から戻ったばかりの頃のことです。内心では台風の向きが逸れて東日本を離れ、東北が襲われなかったことに安堵さえしていたのでした。まさかその同じ台風が、西日本であのような被害をもたらすとは… これはそのようにして届けられたブランコです。 そして、鉄棒と砂場です。 どのキットにも懇切丁寧な手作りの組立説明書が添えられていました。 それから1年。 昨年の9月に再び訪れた庭です。 ヒメイワダレソウが一面に繁茂して花を咲かせ、スギナも多分はまだがんばっているのでしょうが、ほとんどその存在が気にならないほどになっていました。 ヒメイワダレソウは踏めば丈を小さくしますので、人がいつも歩く経路はきちんとそれらしい路になります。そして踏まないところは思い切り丈を伸ばして、心地よいクッションとなります。 この公園のような庭が、植物たちにとって心地よい場所であるのと同じくらい、いつまでも子どもたちにとっての心地よい空間となりますように! 自然工房ウッドウォームズさんのホームページは以下の通りです。興味のある方はぜひご覧下さい。 http://www.wood-warmth.com/ ついでながら、当社のホームページもよろしくお願いいたします。 http://www.yui-garden.com/ |