こだわり派達がうみ出していく、これからの”庭”  〜奈良の地より〜
庭木の病害虫防除 其の3
ニックネーム: スキットマン
投稿日時: 2011/05/21 12:00

前回の投稿の続き、実験の経過観察について。

 

まず、簡単にその実験の内容について整理すると

 

@つるバラに発生した(やや大量発生ぎみ)

 アブラムシに対し、ニームが主原料の資材を

 散布し、どのような効果が現れるのか?

 

Aレモンの苗木についたアゲハ蝶の幼虫は、

 この散布後、本当に脱皮阻害されるのか?

 

ということが主旨の新薬剤(資材)の使用実験。

さらに、ニームが害虫駆除材として効果があると

されているポイントを整理しておくと

 

T.害虫を寄せ付けない(忌避効果:きひこうか)

U.害虫たちの食欲を抑える(拒食効果)

V.完全変態する昆虫の脱皮阻害効果

W.益虫(害虫に対する天敵:テントウムシなどの

 肉食系昆虫たち)には作用しない

X.無毒性・生分解性だから人や環境にやさしく

 安全で安心して使える

Y.化学構造が複雑で耐性がつかない

 

と、大体このようなものでしょうか・・・

 

ここから、実験の経過観察についてですが

まずつるバラのアブラムシですが、

今現在、壊滅状態となっています。

その経過を説明していくと、

 

散布後、5〜6日でアブラムシの数は、

約8〜9割(あくまでも私の主観で)は、

減少しましたが、まだ1〜2割は残っていました。

 

それ以降、観察を続けていくと日毎に

アブラムシの数は減り続けて行きました。

一体どうやって減っていってるのかと、よくよく

観察を続けていて、あることに気づきました。

 

「この虫、そういえば昨日も見たよな?」

ある虫(?)が、バラの葉や蕾のうえを忙しく

歩き回っている様子を見て、

「これってテントウムシの幼虫?」と思い、

昆虫図鑑などで改めて確認!

 

やっぱりそうか。

それ以降、このテントウムシの幼虫の行動を

主体に観察していくと、よ〜く見ていると、

アブラムシにかぶりつく(?)(吸いつく)姿を

確認。

 

しばし観察を続けていると、あっちにもこっちにも

ちっちゃいのやら・・・、その数推定20匹以上。

 

1匹のテントウムシやその幼虫が1日に

アブラムシを捕食していく数は

 20〜30匹とのこと。

 

仮に、この20匹のテントウムシの幼虫が

1日当たり20匹のアブラムシを捕食していけば

1日に400匹のアブラムシが減る。

2日で800匹。3日で1200匹・・・

 

「これは放っておいても、大丈夫やな・・・」

 

案の定、散布後10日もすると、アブラムシの

姿は全く見かけなくなった。

 

 

 

一方、レモンの苗木についた、アゲハの幼虫の

その後は。

まず、散布後数日して明らかに感じられたのは

その拒食作用について。

 

アゲハ蝶は卵から孵化した幼虫は、1・2・3齢・・

幼虫(こげ茶色の状態)から脱皮を繰り返し

終齢幼虫といわれる緑色のものへと変化し

さなぎの状態を経て蝶の姿へと完全変態して

いくが、その間に1匹の幼虫がこのレモンや

ミカンの葉を23〜24枚分の量を食べてしまう

とのこと。

半分くらいしか食べないものもあるので、少なく

見積もっても1匹で30枚くらいの葉を食害する。

 

4〜5匹の幼虫でこのレモンの苗木くらいだと

あっという間に丸裸にされてしまうようなものだが

散布後1週間以上経過した状態でこれだけ。

[画像]

散布を行った時点では、終齢幼虫が1匹、

3〜4齢幼虫が3匹確認されていたが、

そのどれもが死んでしまうことはなかった。

 

さらに、1週間経って全てが終礼幼虫にまで

変化していた。

 

しかし、終齢幼虫の4匹は、積極的に葉を

食害することなく、じっとしたまま動くことなく

その後も葉の食害は殆どなかった・・・

 

先にふれた1匹の幼虫のの食害のほとんどは

この終齢幼虫になってからのもので、

一向に葉を食べることのないこれらの終齢幼虫

達は当然大きくなることもなく、小さなまま

ある日を境に、このレモンの苗木から姿を

消してしまった。

 

死んでそこらに落ちている様子もなく、どこに

行ったか探して、ようやく2匹はさなぎ状態に

なっているのを確認できた。

 

それから、2〜3日していづれもアゲハ蝶に

なることなく死んでしまった。

[画像]

(かなり見ずらいですが・・・)

 

 

今回の実験の経過及び結果を整理してみると

@拒食作用があることは、ほぼ間違いないこと。

A脱皮阻害作用は、完全ではないものの確かに

 ある。ただそれは完全変態の時に現れる・・・

B益虫(肉食系昆虫たち)には、作用しない。

C忌避効果については、散布後1週間くらいは、

 アゲハ蝶が再三、さらに卵を産みつけようと

 このレモンの苗木に近付いてきていたが、その

 周りを飛び回っているだけで、寄り付けないと

 いった様子で他に飛び立ってしまうといった

 光景を何度となく確認できたが、1週間以上

 経過すると卵を産みつけている姿が確認された。

 光分解の早いこのニームが原料の資材の

 忌避効果の作用は1週間といったところか・・・

 

 

今回のこの実験を通しての感想として、

この資材に対して、当初想定していた以上の効果

があったことと、全く想定していなかった

効果(?)に気づかされた。

 

それは、益虫によるもので、

これまで正直、益虫が害虫駆除に役立つといった

認識は非常に薄かった。

テントウムシの幼虫がアブラムシを捕食する様子を

目の当たりにした時、有機農法などに取り組んで

いる方々の思いに感じた気がした。

 

この瞬間、自分の中でそれまでにはなかった

新たな扉が開かれているような気がしてきた・・・

 

 

 

 

 


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